ソフトウェアを建築になぞらえることはもちろんやめた方が良い。今やこれは常識。
ただ、ソフトウェアに関するある営みが「うまくいっていない・いかないだろう理由」を建築に例えるのはアリだと思う。 こんな状況だと家もガタガタになりますよね、ソフトウェアもそうなんです、という用法。 あるいは家を建てるにもこういう営みが必要ですが、それといっしょなんですという論法。
このような目的であれば、家や建物に関する言葉を使うのは、詳しくないヒト達に訴えかけるには悪くない気がする。
と言うことで、そんな時につかえそうな単語や言い回しを自分なりに書き出してみる。
スコープや要件
スコープや要件あるいは前提条件のすり合わせ等が重要なのに、それらにピンと来てないであろう相手に使えるかもしれないワード
間取り、間仕切り、ゾーニング、二世帯住宅、バリアフリー、防犯
内装の話の前に、「まずは『間取り』についてお話しませんか」、という用法が考えられる。
また、それを言ってくれないとイメージががらりと変わって困りまっせということがしばしばある。 家を新築する時に、「二世帯住宅」としたいのに、それを施工主が一度も言葉にしてくれなかった場合、どうだろうか。 建築家と施工主の間ではずっと話が噛み合わない、あるいはたまたまイメージがずれたまま表面的な話だけ噛み合って後々取り返しのつかないことになるだろう。
無論、「二世帯住宅」ぐらいの今時の重要なキーワードは早い段階でプロの建築家側からなんらかのタイミングで引き出されることになるから心配ない。
ただし、建築で言うとそんなバカなというレベルの認識違いが、ソフトウェアの合意形成では発生しやすいだろう。そのような怪しい気配が漂った場合に、「新築で言うと、『二世帯住宅』なのかそうでないのかどうかのお考えがまだお伺いできてませんので...」のようなきっかけづくりに使える言い回しだと思う。
といいつつ、『二世帯住宅』はあまり良い例ではないかな。今後のアップデートすることとしよう。
ともあれ、そのキーワードを共有できているかどうかで、思い描くものが全く異なってくるということはしばしばあるので、注意が必要。
UI/UX
UI/UXは、見えるところにあるので本来はみんながこだわりやすい。
なので、UI/UXの瑣末なところに入り込んで、インフラの話が愚かになるというケースが多いだろう。
一方、ソフトウェアの話になった途端にUI/UXに価値を見出せなり、大事なものがかけたままプロジェクトが進んでいきあとで取り返しがつかなくなるというのもそれなりに厄介かつしばしば見られるように思う。
まあ、「UI」もそれなりだけど、「UXがうんたらかんたら〜」なんて気取って言われたら癪に触る相手もいるだろう。
内装、部屋・ドア、外構、外観、収納、立て付け
とか
居心地、住み心地、リラックスできる
とか
キッチンの高さが重要ですよね
みたいな例えで相手のふところに飛び込むのが良いのではないかと感じている。
設計が重要
自分が逆の立場だったら本当にそう思うが、ユースケース図とかクラス図とか言われてもさっぱりだろう。悲しいなぁ。
それはさておき、
平面図 断面図 展開図 間取り図 立体図 測量図
これらはなんとなく必要そうな感じが伝わる。
無理に、平面図がクラス図にあたるという類の例えをする必要はないし、それは逆効果だと思う。
どちらかといえば、重要な設備や要件には複数の視点で掘り下げると良いというようなことを、平面図と断面図で立体的に見て見ましょうというように促すのが良いのかな。
非機能要件
UI/UXはまだしもソフトウェアの非機能要件やインフラ関連は見逃されがち。 建物の場合も少なからずそうかもしれないが、ソフトウェアほどそうではない(=指摘さえすればみんなが重要だと思ってくれる)ので、ものの例えとしては悪くないように思う。
通風口(風通し)、排水口・排水溝(水回り)、上下水道(浄化設備)、電気の配線、配管・配線
(ソフトウェアの例だとピンとこないかもしれませんが)建物に例えると下水道にあたります。 この手の設備は、無いとこまりますよね、問題があると居心地を著しく損ねる場合がありますよね、それと一緒です。
という論法に使える。
そのような工程や作業に理解が得られない場合(つまりお金や時間を渋られた場合)にも有用な例えにつかえそうだ。
前述の設備の例もさることながら、
下地工事、仕上げ工事
といった例も、地震や建物の崩落のニュースが多い現状だと、地盤という言葉を使うとイメージしやすいだろう。
地盤が軟弱なので補強が必要です、というのは万能な説明方法と思われる。
準備が重要
ソフトウェアの営みは、コンピュータの中で完結することもあり、メインの工程さえ理解されにくい。
「準備」についてはなおのこと。
着工準備、解体除去、地縄張り
といった例えはどうだろうか。